
SNSで「FIRA60」というのを見たけど、どういう意味?
こんにちは。40代で2人の子供を育てながら、サイドFIREを目指しているせつやんです。
子育てをしながら資産運用を続けていると、「いつになったらFIREできるんだろう」と不安になることもありますよね。「60歳までにFIREできなかったら、もはや『早期リタイア』とは言えないよな……」なんて心配をしている方もいるかもしれません。
そんな子持ち世帯でも、余裕を持って取り組めるFIREの派生形の1つが「FIRA60(ファイラ60)」です。今回はそんな、近年密かに話題を集めつつあるFIRA60について考えてみたいと思います。
FIRA60(ファイラ60)とは?
FIRA60は、元青山学院大学大学院教授の榊原正幸氏が提唱する、FIREの派生形の1つです。
「FIREFinancial Independence , Retire Early」ではなく、「Financial Independence , Retire Around 60」の頭文字を取ったもので、「経済的自立と60歳前後でのリタイア」を意味します。
FIREが「早期リタイア」、つまり、定年よりも大きく前倒してリタイアすることを目指すものであるのに対し、FIRA60は、定年付近でリタイアすることを目指します。
FIRA60が注目される背景
FIRA60が注目される背景には、「超高齢化社会」「健康寿命の長期化」が挙げられます。
世界有数の長寿国として知られる日本では、定年の引き上げや年金受給開始年齢の引き上げなどが常に話題に上がります。
「働きたい」意思の変化も……
朝日新聞社「朝日新聞Reライフプロジェクト」の「定年や60代以降の働き方」に関するアンケートでは、以下のような結果が示されています。

49歳以下では4人に1人が「60歳までに仕事を辞めたい」と思っている一方で、年齢を重ねるごとにその割合は下がっていき、60歳以上では「働けるうちはいつまでも」の割合が急激に高くなっていきます。
60歳でのリタイアは十分早い
これを見て感じるのは、高齢化に加えて物価高も急激に進む現代においては、「60歳でのリタイアは十分に『早期』と言える」ということです。
高年齢者雇用安定法の改正により、企業には70歳までの就業機会確保(努力義務)が求められるようになり、定年延長や再雇用制度が一般的になっています。
また、仮に60歳で定年を迎えても、実際には年金の標準受給開始時期は65歳であり、それまでの「空白の5年間」の生活費を確保しなければならず、そのために働くという人も少なくありません。
先のアンケートを見ても、70歳程度まで働きたい(あるいは働かなければならない)という人は増えています。
60歳で経済的な自由を手に入れてしっかりリタイアすることは、その先の長い人生を考えれば十分に魅力的な選択肢と言えそうです。

60歳からでもまだまだ人生は長い!
FIREとFIRA60の違い
にわかに注目を集めているFIRA60ですが、具体的にFIREとは、どのような違いがあるのでしょうか?

FIREとの違い1.目標年齢
FIREは、早期リタイアを目的としたもので、一般的には30代〜40代、遅くとも50代の半ばまでに退職することを目指します。定年である60歳に近づいてからリタイアすることは、あまりFIREとは認識されない傾向があります(個人的な意見)。
一方のFIRA60は、その名の通り、60歳前後でのリタイアを目指します。言い換えると、「定年以降は働かないライフスタイル」とも言えます。
FIREとの違い2.準備期間
FIREは比較的若い年齢でのリタイアを目指すことになるため、必然的にFIRE資金を準備する期間が短くなります。
仮に20代からFIREのための資産運用を始めたとして、十数年〜20年程度で必要資金を作る必要があります。準備期間が短いということは、それだけ入金力を高める必要があり、切り詰めた生活をしなければならないケースもあります。
一方のFIRA60は、60歳くらいまでリタイアの時期を後ろ倒しにしているため、資金を準備する期間を長く取れます。30代や40代から早期リタイアを目指したとしても十分に目指せる目標となります。
逆に言えば、「FIREよりも長く働く必要がある」ということでもあります。
FIREとの違い3.達成後の主な収入源
FIREを達成したあとの主な収入源は、自らが保有する金融資産等の資産収入です。FIREの4%ルールに従えば、1億円の資産に対して4%の400万円が、取り崩せる金額(税金は考慮せず)となります。
また、早期退職となるため、退職金の額も少なめになります。
一方のFIRA60は、基本的には定年まで働くことになるため退職金を満額もらえます。そして、60歳になれば、年金の繰上げ受給も可能になります。
用意すべき資金も小さく済む
これらの資金も考慮すると、FIRA60達成のための資産額はFIREに比べると大幅に小さく済みます。
例えば、毎月30万円の生活費が必要な場合でも、年金の繰上げ受給で月12万円もらえるのであれば、月18万円の資産収入があればOKです。
月18万円の資産収入を得るために必要な資産額は、18万円 × 12ヶ月 × 25 =5400万円です。仮に、退職金で2000万円もらえるのであれば、60歳時点までに自分で作るべき資産額は3400万円でよいことになります。

40代で1億円作るのと、60歳までに3400万円作るのでは難易度がまったく違いますね!
60歳で手にできる退職金&年金(繰上げ)のコンボが強力
60歳まで働くと退職金が満額でもらえます。これを「資産収入を得るための資産」として投資をすることでリタイア後の生活を支える基盤になります。
場合によっては、年金の繰上げ受給も検討するのがおすすめです。年金は通常65歳からの受給ですが、繰上げ受給を申請することで最大で5年間、受給開始時期を早めることができます。つまり、60歳から受給することができます。
この「資産収入の底上げ」&「早期の年金受給」のコンボにより60歳以降の生活を安定させることが可能です。また、iDeCoの受け取りを年金型にすることで、さらに収入を底上げすることもできます。
ただし、1ヶ月受給を繰り上げるごとに受給額が0.4%減額となるため、最大で24%の減額となる点には注意が必要です。それでもキャッシュフローに問題がない場合や、十分な資産がすでにできている場合は敢えて繰り上げをしないという選択肢のほうがいい場合もあります。
長く働く=厚生年金の加入期間が伸びる
FIRA60では、FIREよりも長く働くことを想定するので、自然と厚生年金への加入期間も伸びることになり、のちの年金受給額も大きくすることができます。

給与がもらえなくても、それに代わる収入の下支えができますね!
FIRA60を達成するにはいくら必要?
FIRA60の達成に必要な資産額は、以下の金額を想定することで算出することができます。
- 60歳以降の支出額
- 60歳以降に期待できる年金収入
- 60歳でもらえる退職金の額
ケーススタディ
以下のようなケースで必要額を計算してみましょう。
- 60歳以降の想定支出は夫婦で月35万円
- 60歳以降の収入は、年金(繰上げ)が夫婦で合計月20万円、労働なし
- 退職金は1000万円
- 40歳からFIRA60のための資産づくりを始める
- この時点での金融資産額は500万円(現金)
このケースだと、年金収入で足りない生活費は月15万円です。このような場合では通常は働くことで不足分を補填しますが、FIRA60では働かない前提で計算をします。
不足分は月15万円なので、4%ルールに従うと、必要な資産額は、15万円 × 12ヶ月 × 25 =4500万円となります。
60歳時点では、「退職金も含めて」この金額を作ればいいので、「自分で作るお金」は、ここからもらえる想定の退職金を引いて算出します。つまり、4500万円 ― 1000万円 =3500万円となります。
さらに、もともと保有していた現預金が500万円あるので、実質的に新たに作るお金は3000万円ということになります。
どうやってFIRA60資金を作る?月々の積立額は?
ケーススタディでは、40歳時点からFIRA60資金を作る想定となっています。20年間で3000万円を作ろうとした場合、毎月の必要積立金はいくらになるのでしょうか?
以下が、年平均リターン5%で計算したときのシミュレーション結果です。オルカンの直近30年間の期待リターンが7〜8%であることを考えると、セーフティな計算となっています。

40歳からFIRA60を目指す場合、月7万3000円強の積立投資で、60歳時点で3000万円の資産を築ける計算です。
この積立額は、新NISAの生涯投資枠1人分にすっぽり収まる投資額(元本1767万円)です。つまり、この積み立てで築いた資産の取り崩しには、一切の税金がかからないことになります。

新NISAの投資枠を20年で埋めるには月7.5万円が必要です。夫婦の枠を埋める場合はその倍、月15万円が必要になります。
【参考】「20年で1億円作る」FIREの場合は……?
今回のケーススタディでは、月7.3万円強の積み立てでFIRA60を達成できる計算となりましたが、FIREの達成を目指す場合はどうでしょうか?
同じく20年で1億円の達成を目指す場合、年平均リターン5%だと以下のようなシミュレーションになります。


げげぇ〜っ!月24万円!?無理ゲーだろこれ……!
5%のリターンで、20年で1億円を目指すには、月24.5万円もの入金が必要になります。特に子持ち世帯ともなれば、これができる人はかなり限られてくるのではないでしょうか。
そうなると、準備期間を伸ばすか、よりハイリスクな商品での運用をするという選択肢を取ることになります。準備期間を伸ばすということは、働く期間を伸ばすということなので、特にFIREを目指している人はそこに拒否感がある人も多く、後者を選ぶことになりそうです。
ということで、年利10%で再計算したのが以下です。

月々の積立額は13.8万円となり、だいぶ現実味のある金額になりましたが、それでも大金であることには変わりありません。何より、年平均リターン10%は、結構「攻めた想定」と言えます。
実際にはこのようにならないケースも十分あり得るという認識の上で準備を進めて行かなければなりません。

やっぱりFIREするのって大変なんだなあ……。
FIRA60なら教育費の心配も激減。支出も激減
子持ち世帯がFIREを目指す上での最大の懸念点になるのが、教育費です。特に大きな出費になるのが大学進学のタイミングで、親の年齢で言えば、50代くらいになる人が多いと思います。
逆に言えば、60歳時点では子供の教育費負担は終了していることも多く、家計に余裕が出てきている場合も多いでしょう。
大学卒業後に子供が家を出ていくことになれば、さらに支出は減ることになり、60歳以降の支出を考える場合にもその分を考慮して小さい支出を想定することも可能です。
40代での子持ちFIREは、子供の教育費を丸々負担しながらFIREする必要があるため難易度が高くなりがちですが、子育てが終了した60歳でのリタイアであれば、この心配はほとんどなくなります。
子持ち世帯にとっては、教育費の支出が終わったあとにリタイアできるのはFIRA60の最大のメリットと言えるかもしれません。

子育てが終わっている段階でのリタイアなら、支出も想定しやすいですね!
まとめ:子持ち世帯にとってFIRA60は現実的な選択肢!
今回は、子持ちFIREを目指す世帯の新たな選択肢としてFIRA60を紹介しました。
FIREを考える上で切っても切り離せないのが「自分が何歳まで生きるか」を考えることです。「人生100年時代」とも言われる現代においては、資産寿命の文脈で「長生きリスク」もよく語られます。
その意味では、急激に資産を貯めてパッと仕事をやめる30〜40代でのFIREは、資産寿命を短くするリスクを常に孕んでいるとも言えます。
今回紹介したFIRA60は、じっくりと時間をかけながら、しかも比較的小さな金額を作ればよい、というFIREの派生スタイルです。
達成した時点から年金という安定収入を期待できることや、退職金ももらえること、さらに子育ても一段落した段階で実践できることから、将来を見通しやすいのが大きなメリットです。
そういう意味では、特に子持ち世帯には1つの最適解とも言えるスタイルかもしれません。子育てをしながら毎月大きな資金を積み立てるのが厳しいかも……という場合の有力な選択肢として、検討してみるといいかもしれません。
ということで、今回は以上です!



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